冷却型、それとも非冷却型?

検出器冷却型の赤外線サーマルカメラには、検出器非冷却型のものに比べていくつか長所があります。 しかし、検出器冷却型はより高価です。 近年の冷却型赤外線サーマルカメラは、センサー温度を下げるクライオクーラーを内蔵したイメージセンサーを備えています。 熱的に誘導されるノイズを、イメージを取得するシーンの信号ノイズより小さくするには、センサーの温度を下げる必要があります。

クライオクーラーは極めて厳しい機械的公差の範囲に加工した可動部品を持ち、時間の経過と共に摩耗が進みます。また、ヘリウムガスはガスシールを経由して徐々に漏れ出てしまいます。 最終的には、運転期間が10,000~13,000時間に達した時点でクライオクーラーの復元が必要となります。

非冷却型カメラの長所については疑問があります:R&Dの用途で冷却型赤外線サーマルカメラの方が優れているのはどのような場合でしょうか?

回答:アプリケーションによって異なります。

非常に小さなターゲット温度の違いを測定したい、最高レベルのイメージ品質が必要、迅速で高速性を要する用途に使用する、温度プロファイルを確認したり極小ターゲットの温度を測定したい、電磁スペクトルの非常に限られた部分を可視化したい、赤外線サーマルカメラを他の測定デバイスと同期したい … そのような場合、冷却型赤外線サーマルカメラが最適な選択となります。

比較の例

高速性

  

これらの赤外線画像は、時速32キロで回転するタイヤの捕捉結果を比較したものです。 左の画像は冷却型赤外線サーマルカメラでの撮影結果です。 タイヤは回転していないと思われるかもしれませんが、これは冷却型カメラの極めて高速な捕捉率によるもので、タイヤの動きが止まって見えるのです。 非冷却型では、回転中のタイヤを捉えるには捕捉が遅すぎて車輪のスポークが透明になります。

空間的解像度

  

上の赤外線画像は、冷却型および非冷却型カメラシステムにより取得した結果をクローズアップして拡大した最良の画像を使って比較したものです。 左の画像は、13μmピッチの冷却型カメラに4倍のクローズアップレンズを組み合わせて撮影したもので、スポットサイズは3.5μmとなっています。 右の画像は、25μmピッチの冷却型センサーに等倍のクローズアップレンズを組み合わせて撮影したもので、スポットサイズは25μmとなっています。 冷却型カメラは感知する赤外線波長が短く、通常は非冷却型カメラより拡大能力が高いのが特徴です。 冷却型カメラは感度特性に優れ、多数の光学部品からなるレンズまたは分厚いレンズで構成されているため、良好なSN比を維持しながら使用が可能で優れた拡大能力を発揮します。

感度

  

  

冷却型サーマルカメラが提供する高い感度は、多くの場合、その価値を十分に理解することは困難です。 感度20mKの冷却型サーマルカメラと比べて、感度50mKの非冷却型サーマルカメラの恩恵を受けるのはどのような場合でしょうか? この恩恵の説明のため、感度に関する簡単な実験をしてみました。 この比較では、まず手の平を壁に何秒間か当てて、熱による手形を作成しました。 最初の2つの画像は手を離した直後の手形を示しています。 2組目の画像は2分後の熱による手形を示しています。 ご覧の通り、冷却型カメラがまだ熱による手形の大部分を感知できるのに対し、非冷却型カメラでは部分的な手形の跡が判別できる程度です。 冷却型カメラは非冷却型カメラと比べ、より小さな温度の違いをより長い時間、はっきりと検出できるのです。 これは、冷却型カメラを使うことで検出対象についてのより詳細な情報が得られ、微少な熱的異常の検出が可能になることを示しています。

スペクトルフィルタリング

         

 

冷却型サーマルカメラの非常に優れた長所の1つはスペクトルフィルタリングを簡単に実行できる点で、それにより、非冷却型カメラでは解明できない詳細が判明し、また測定が可能になります。 ここに示す最初の例では、レンズ後部のフィルタホルダに収納されたスペクトルフィルタ、またはデュワー検出器アセンブリ内蔵のスペクトルフィルタのいずれかを使用しています。 エンドユーザーは、火炎の中での石炭粉末の燃焼状態を測定して燃焼特性を明らかにすることを望んでいました。 私たちは、「火炎を透過して見る」スペクトル赤外線フィルタを使って、火炎を通す帯域のフィルタを冷却型カメラに適用し、石炭粉末の燃焼イメージを取得しました。 最初のビデオは火炎フィルタ未使用の場合で、見えるのは火炎だけです。 2番目のビデオは火炎フィルタを装着した場合で、石炭粉末の燃焼をはっきりと確認できます。

  

2番目の例では亜酸化窒素フィルタを使用して、亜酸化窒素がIRに影響を及ぼさない程度まで吸収させます。その結果冷却型サーマルカメラで「それが見える」ことになります。 このアプリケーションでは、より優れた亜酸化窒素マスクと清掃システムの設計がポイントになりました。最初のビデオは古いマスクデザインのイメージを伝え、2番目のビデオは新マスクデザインのイメージを伝えるものとなっています。 ご覧の通り、古いマスクでは多量の亜酸化窒素が部屋に漏れ出ており、それはさまざまな理由で問題を生じます。 新しいマスクは漏れを最小限に抑える設計で、より優れた解決策となることでしょう。

関連記事