ガス検知用赤外線カメラによる環境保全

産業/製薬/石油化学のプラントでは、環境汚染ガスまたは、プラント従業員や周辺住民の健康に有害なガスが排出されることがあります。 環境保護当局では、こうしたガスの排出量が国家基準や国際基準を超えないように管理しています。 このようなガス排出規制活動に、ガス検知用赤外線カメラが利用されています。
オランダの環境保護局DCMR(所在地: Rijnmond)は、欧州の環境保護当局の中でも、いち早くこの技術を導入しました。 DCMRの技術責任者であるRob van Doorn氏は、次のように説明しています。「ガス検知用赤外線カメラ技術の利用により、当局が管轄する企業でのガス漏えいの実態を目に見える形で把握できるようになりました。 DCMRのような行政組織にとって、赤外線カメラ技術は、ガス排出量の規制を積極的かつ効率的に実行するための優れたツールとなります。」

ガスの排出は周辺住民の健康や生活の質に直接影響するため、これに関する規制の遂行はDCMRの最も重要な任務だと言えるでしょう。 しかし、van Doorn氏によれば、フリアーシステムズのガス検知用赤外線カメラGFシリーズを購入する前は、ガス漏れ検査は非常に困難な作業でした。 「数式モデルを使えば、貯蔵タンクやパイプラインなどのガス漏出量を理論的に計算することは可能です。ただし、近年の国際的な研究の結果、実際のガス漏えい量は総じて、数式に基づく推定値よりはるかに大きいことが示されました。 例えば、貯蔵施設では、マンホールが破損して正常に密閉されていない状況にもかかわらず、プラント従業員がこうした事態を認識できていないケースもあります。また、何らかのメンテナンス上の問題により、ガス漏れが起き得るケースもあります。推定値の算出では、こうした不測の事態の可能性が一切考慮に入れられていません。

当初、van Doorn氏は、実際のガス漏えい量の測定を外部のコンサルタント業者に依頼していました。 「しかし、この方法は長期的に有効な解決策とはならないことにすぐに気づきました。 コンサルタント業者は1回の検査に法外な料金を請求するので、私たちの希望する頻度で検査を依頼すれば、総費用は我々の予算を超えてしまいます。 そこで、ガス漏れ検査用機器を自分たちで購入すべく模索を始めました。」

フリアーシステムズのGFシリーズなら、トレーニングはほとんど不要

van Doorn氏らは、いくつかの検出法を比較し、最終的にフリアーシステムズのガス検知用赤外線カメラFLIR GF320を導入することに決めました。 「過去に業務を依頼した外部のコンサルタント業者では、SOF法(太陽掩蔽法)やDIAL法(差分吸収光検出/測距法)といった検出法が使われていました。 これらの検出法は確かに信頼性も高く、排出量を定量化できますが、非常に高額です。機材も巨大で、大型トラックによる搬入が必要になります。さらに、操作も難しく、使いこなすにはそれなりのトレーニングも必要になります。 対照的にGFシリーズははるかに低価格です。 またこのカメラは小型軽量で持ち運びやすく、操作が簡単でトレーニングはほとんど不要です。」

ガス検知用赤外線カメラは、非接触で迅速に測定が行え、現場状況の情報を即時に得られます。 また、小規模なガス漏れなら数メートル先、大規模なガス漏れなら数百メートル先でも検出できるため、アクセス困難な場所でも円滑に使用できます。さらに、タンカートラックや貨物船や貨物列車など、移動中の輸送車両からのガス漏れも検出することが可能です。

操作は簡単

FLIR GF320は購入後、簡単なトレーニングをするだけで、すぐに使うことができます。 van Doorn氏によれば、FLIR GF320は非常に操作が簡単です。 「ほとんどトレーニングをしなかったのに、このカメラを使って素早く効率的に、 精度の高い検査を行うことができて驚きました。 操作が非常に簡単なので、全くトレーニングを受けていない人でもガス漏れの有無を確認できるでしょう。 カメラを見れば、使い方がわかると言ってもいいぐらいです。」

赤外線を吸収

FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラは、冷却型アンチモン化インジウム(InSb)赤外線検出器を搭載しており、温度分解能は25mK(0,025 ℃)、解像度320 x 240ピクセルの熱画像が生成されます。 ガス検知用赤外線カメラFLIR GFシリーズは、ガスが赤外線の電磁波を吸収することに基づいてガスの視覚化を行います。 ほとんどのガスは、特定波長の赤外線を吸収する特性があります。 つまり、一定の赤外線波長で、ガスが実質的に不透明になるのです。 FLIR GFシリーズの全モデルは、スペクトルフィルター、焦点面アレイ、特定のガスが赤外線を吸収するごく狭い波長域に対応したレンズシステムから構成されます。 ガスが赤外線を吸収し、ガス漏れの背後にある物体からの赤外線放射を妨害するため、ガス漏れが白煙または黒煙のように表示されます。色はカラーパレットの設定をホワイトホットまたはブラックホットに切り替えることで変更できます。

FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラは、3.2〜3.4μmの波長に調整されています。ほとんどの炭化水素ガスはこの波長域の赤外線を吸収する性質があります。

FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラでは様々なガスの検出が可能ですが、石油精製業界で一般的な以下の19種類のガスの検出能力については試験により実証されています。

  • ベンゼン
  • ブタン
  • エタン
  • エチルベンゼン
  • エチレン
  • ヘプタン
  • ヘキサン
  • イソプレン
  • メチルエチルケトン(MEK)
  • メタン
  • メタノール
  • メチルイソブチルケトン(MIBK)
  • オクタン
  • ペンタン
  • 1-ペンタン
  • プロパン
  • プロピレン
  • トルエン
  • キシレン


上記の化学化合物やガスは、通常、肉眼で見ることができませんが、FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラは、ガスが赤外線を吸収する特性を利用して、ガス漏れを「ガスプルームの動き」として、煙のような形でリアルタイム映像に可視化します。(映像はカメラのビューファインダー越し、または液晶スクリーンに表示されます)。

人間工学に基づいた設計

FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラは、リアルタイムに可視化するだけでなく、可視光ビデオ/サーマルビデオでの録画も可能です。 van Doorn氏は、次のように説明します。「ガスプルームなどの流動する煙の映像は、静止画よりも動画形式の方がはるかに明瞭に確認できるため、この機能は非常に重宝します。 ガス漏れの報告業務には、このビデオ録画機能が欠かせません。」

検査の実施時には、大量のビデオ録画が行われることも少なくありません。 こうした場合、録画ビデオの量が多すぎて、ビデオアーカイブの整理・保存作業が難しくなることもあります。 FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラでは、ビデオ録画時にGPS位置データが自動的に埋め込まれるため、こうした作業も円滑に行えるようになります。 ビデオのメタデータには日付、時刻、GPSデータが埋め込まれるため、ビデオアーカイブの整理作業もはるかに簡単に行えます。

また、FLIR GFシリーズの全てのガス検知用赤外線カメラは、人間工学的に基づく設計が採用され、回転ハンドル、ダイレクトアクセスボタン、傾斜可能なビューファインダー、LCDスクリーンを備えています。 FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラの総重量は、わずか2.4kgで、他のガス検出ツールよりも軽量かつコンパクトな設計です。 FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラには、エンドユーザーの視点から高度な人間工学設計が採用され、背筋や腕への負担を軽減させるだけでなく、作業者の安全性を高め、パフォーマンスを向上させます。

van Doorn氏は、FLIR GF320ガス検知用赤外線カメラを数カ月使用してみて、カメラのガス漏れ検出精度の高さに感心しました。 van Doorn氏は言います。「このカメラの感度は予想以上でした。特に、高感度モードには驚きました。 このカメラは、ごく小規模なガス漏れも明瞭に可視化でき、さらに、離れた場所からでも的確に検出できました。まさに驚異的な感度です。」
高感度モード

特殊機能の高感度モード(HSM)は、全てのガス検知用赤外線カメラGFシリーズに搭載されています。 高感度モードでは、サブトラクション処理技術によりカメラの温度分解能が向上します。 サブトラクション処理とは、現行フレームから1つ前のフレームのピクセルを差し引く(サブトラクション)ことにより、フレーム間の差を強調することで、この処理により映像内で移動するガス漏れを鮮明に抽出することができます。

ガス漏れの予防

「このカメラを使用することで、以前なら発見できていなかったようなガス漏れや規制違反を発見できるようになりました。 保管用タンクは良好に稼働し問題なくメンテナンスされているとずっと考えられていましたが、実際にはかなりひどいガス漏れが発生していました。 この検出結果を受けて、今後のガス漏れ防止策を講じることができました。 これだけでも、このカメラの価値は実証されています。」

環境保護局「DCMR」(所在地:オランダ、Rijnmond)

DCMRは、Rijnmond(オランダ国内の大規模な「ロッテルダム港」エリア)の地域環境保護局です。 この地域にはヨーロッパ最大の港湾が存在するため、製油所、廃棄物焼却炉、廃棄物処理場や、いくつもの大規模化学プラントや冶金プラントといった重工業施設が数多く存在しています。 こうしたプラントは例外なく、汚染のリスクを抱えています。 こうした状況に対処するため、ロッテルダム、Rijnmond地域の環境保護の強化に向け、1972年にDCMRが設立されました。 DCMRは、土壌汚染、廃棄物処理、騒音等による影響を最小限に抑えるため、浄化プログラムの管理・監視を担っています。

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