音響カメラの価格帯は?カメラ選びのポイントと導入メリットも解説

世界的に省エネが進められている今、菅首相(当時)による2050年にカーボンニュートラルを達成する宣言を受けて、日本国内でも「CO2削減」への取組みが急務になっています。しかし、いざ音響カメラを導入しようとしても、価格帯や種類の多さに迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、音響カメラの価格帯と選び方のポイント、導入することで得られるメリットについて詳しく解説します。


音響カメラとは

音響カメラとは、音の発生源を視覚的に特定できるカメラ、つまり「音を見える化するカメラ(デバイス)」です。従来のカメラに搭載されているマイクでは、音の発生方向を特定することが困難でした。

一方、音響カメラは、従来のカメラと同様に撮影を行って音の発生源を探し出し、モニター画面上に音の大きさを色で表示(カラーマッピング処理)したり、音源の方向を形で示したりできます。また、特定の周波数帯域の音源のみをフィルタリングして表示することも可能です。


音響カメラが「音を見える化」する原理とは

音響カメラは、オフィスや工場での騒音対策、産業設備からの異音や気体漏れの検知など、さまざまな分野で活用されています。どのような原理で「音を見える化」しているのでしょうか。

気体が小さい穴や隙間を通過して、高圧側から低圧側に移動する(空気漏れ=エアリークが発生する)と、その圧力差によって乱流が発生します。この乱流は、人間の耳には聞こえない超音波を伴っています。音響カメラは、この超音波をマイクロフォンによって検知・検出し、音の発生源を特定しているのです。

そして、音響カメラは、超音波やエアリークを検知・検出することから「超音波カメラ」や「エアリークカメラ」とも呼ばれます。


音響カメラが活躍するシーン・活用事例

音響カメラは、幅広い分野での活躍が期待されている革新的な技術です。目に見えない音を可視化することで、問題を迅速に特定し、解決に導いています。

音響カメラの主な活用事例は以下のとおりです。

・製品の品質管理(気密性試験)

・回転機の異常音の検知、検出

・放電に伴う異常音発生箇所の特定

・設備や装置のエアリーク箇所の特定

・ガスの充填保管設備、配管などからの漏れの特定

Si124-2.jpg

>>「FLIR Si124音響カメラ」の使用事例はこちら

音響カメラを導入するメリット

音響カメラを導入するメリットは、主に以下の6つです。

・大幅にコストを削減できる

・エアリーク・部分放電を迅速に検知検出できる

・非破壊で検知検出できる

・リアルタイムに検知検出できる

・設備機器の老朽化・劣化を予防できる

・騒音が発生する場所でもエアリークだけを検知検出できる

ひとつずつ見ていきましょう。

 

大幅にコストを削減できる

工場や産業設備で稼働する機器や装置などに部分放電やエアリークが発生すると、余分なエネルギーを消費するため、生産活動とは無関係なコストを払うことになります。音響カメラは、部分放電やコロナ放電の検知、空圧機器の異常の早期発見ができるため、余分なエネルギーを消費せず、光熱費や機器の故障、ダウンタイムなどを最小限に抑えられます。

また、圧縮空気の漏れや放電の点検を迅速に行えることから、点検に割く人件費を削減できるでしょう。

Si124-1.png

 

エアリーク・部分放電を迅速に検知検出できる

従来は、目視や手で触って設備や機器の異常を確認するのが一般的でしたが、音響カメラを使えば、目に見えないエアリークでも素早く発生源を特定することが可能です。

また、工場や産業設備で発生する部分放電も迅速に検知・検出できます。問題箇所をスピーディに点検できることは騒音対策に有用で、労働環境の改善や生産性の向上、近隣住民への配慮などにも役立ちます。

 

非破壊で検知検出できる

配管やコンプレッサーといった、工場や建物の設備で発生しているエアリークのなかには、目には見えない場所や設備内部で起こっているものもあります。音響カメラは、それらの設備や機器を破壊したり分解したりせずに超音波を捉え、問題箇所を特定してエアリークを検出・検知できます。

Si124 acoustic imaging-1200x628.jpg

リアルタイムに検知検出できる

小型かつ軽量なタイプの音響カメラであれば、エアリークのレベルや部分放電をリアルタイムに分類して検知・検出できます。「設定や操作が複雑で難しい」「複数人でなければ操作できない」といった心配がなく、優れた操作性で容易に設備や装置を点検可能です。

 

設備機器の老朽化・劣化を予防できる

配管やコンプレッサーなどの設備や機器で発生するエアリークを放置すると、その設備や機器の老朽化と劣化を早めてしまいます。また、老朽化や劣化に伴い、余計なメンテナンス費用や設備交換に伴うコストがかかってしまうでしょう。

音響カメラでエアリークの発生箇所がないか、異常がないかを定期的に点検することで、建物や設備機器の老朽化を予防し、劣化を遅らせることが可能です。

 

騒音が発生する場所でもエアリークだけを検知検出できる

複数の生産設備や装置が常に稼働している工場内や産業現場は、さまざまな音に包まれており、エアリークやガス漏れなどの発生源特定が非常に困難です。

音響カメラは、騒音が発生する工場のような場所でも、人間の耳では聞き分けられないエアリークや、目には見えない放電だけを検知・検出できます。たとえば、FLIRの音響カメラSi124は、マシーンラーニング技術によるフィルタリング効果により、ユーザーが画面を見ながら手動で感度調整をする必要がなく、誤検知を最低限に抑えることが可能です。

他社製品の一部にはマシーンラーニング技術がなく、カメラを扱うユーザーの経験や勘に頼って操作しなければならず、誤検知が発生するリスクがあるため注意しましょう。


音響カメラの価格帯とは

音響カメラは、100万円から300万円まで幅広い価格帯で販売されています。

カメラ一台の価格としては高価に感じるかもしれませんが、エアリークや部分放電による年間の損失コストやエネルギーコスト、点検にかかる作業時間などを考慮すれば、決して高くありません。

音響カメラの価格帯に幅がある理由

音響カメラは、工場のような製造現場だけではなく、インフラや建物の設備点検などさまざまな用途で使用されます。用途によって求められる機能や性能が異なるため、価格帯にも幅があります。機能や性能とは、マイク性能や検知感度、マシーンラーニング技術による自動調整機能などです。

高機能かつ高性能なモデルほど価格は高くなりますが、その分ユーザーのスキルや経験に依存することなく、目的とする成果を得やすくなります。

 


音響カメラを選ぶときのポイント

多くの音響カメラが存在するため、初めて購入する方や導入を検討している方のなかには、どのカメラを選べばよいか迷う方も多いでしょう。

ここでは、音響カメラを選ぶときのポイントを3つ紹介します。

・操作性

・マイクの数

・使いやすさ

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

1.操作性

工場や建物の設備、機器を点検するときに両手が塞がっていると「手すりをつかむ」「ヘルメットやメガネなど安全装置を調整する」といった行動ができません。

片手操作(ハンドヘルド型)のカメラであれば、不安定な場所であっても片手でカメラを持って点検しながら、もう片方の手で手すりをつかめるため安全です。音響カメラによっては、問題箇所や異常部位をタッチスクリーン上で直接描き込めます。紙に描き写したり、画像編集ソフトで加工したりする必要がないため、レポート作成の負担も大幅に軽減されるでしょう。

 

2.マイクの数

より小さなノイズを検知するためには、より多くの検知用マイクが必要です。

ほとんどの場合、工場や建物の設備、機器の点検を行う際には、エアリークの音以外にも、雑音や作業音、機械騒音などが発生しています。一方で、点検のために、すべての設備や機器を停止することは困難です。

多くのマイクを備えたカメラであれば、あらゆる音のなかからエアリークや部分放電だけを検出でき、位置の特定や定量化に大きく貢献します。たとえば、124個のマイクを備えたカメラは、16.5kHzの漏れと18.5kHzの漏れの両方を拾えるほど高性能です。

Si124 genri1.png

 

3.使いやすさ

音響カメラをせっかく導入しても、使いこなせなければ意味がありません。そこで、音響カメラを選ぶときは、測定者がカメラの能力を十分に発揮できる使いやすさがあるかも重要なポイントとなります。

最小限のトレーニングで直感的に使用できる音響カメラであれば、人材育成の負担を軽減でき、専門知識や経験がなくてもすぐにエアリークや放電箇所を特定可能です。また、機器自身がエアリークや部分放電を検知できるように機械学習を行っているなど、測定をサポートする機能があれば、測定者のスキルに頼ることなく、どんな条件であっても、満足のいく測定結果を得やすくなります。

Si124tokuchou8.png

一方、感度の調整を測定者自身が行うなど知識と経験に基づいたトレーニングが必要な音響カメラを導入すると、操作設定やトレーニングを外部に依頼することになり、コンサルタント委託費用を支払わなければなりません。導入にあたっては、経験や勘に頼らず、誰でもすぐに使い始められるような音響カメラが理想的です。

 


エアリーク・部分放電の見える化には「FLIR Si124音響カメラ」がおすすめ

「FLIR Si124音響カメラ」は、軽量・コンパクトで持ち運びやすく、マシーンラーニングによるエアリーク・部分放電測定をサポートする機能が搭載されており、最小限のトレーニングで直感的に使用できるカメラです。124個の高感度マイクと強力なノイズキャンセリング機能により、工場や建設現場などの騒音環境でも、微細なエアリークや異常を鮮明に捉えます。

デジタルカメラ画像と音響画像をリアルタイムに合成することで、音の発生源を従来よりも最大10倍速く特定可能で、問題箇所を迅速に確認して点検を効率化します。また、最大130m離れた場所からの遠隔測定にも対応。高所や危険な場所の点検も安全かつ効率的に行えます。

Si124.png

>>FLIR Si124音響カメラの詳細はこちら

 

 

まとめ

本記事では、音響カメラの価格帯と選び方のポイント、導入することで得られるメリットについて解説しました。音響カメラは100万円から300万円まで幅広い価格帯で販売されていますが、価格以上に導入で得られるメリットのほうが大きいといえます。

設備や装置から発生するエアリーク、部分放電などによる損失コストに比べれば、決して高くはありません。音響カメラの導入にあたっては、操作性に優れ、トレーニングコストのかからない高性能を選びましょう。

「工場内の設備点検を効率化したい」「点検の人為的なミスや誤検知を減らし、設備の稼働率を向上したい」という方は、音響カメラの利用をぜひご検討ください。

そのほか、音響カメラに関するお困りごとや、設備機器の点検作業に課題をお持ちの場合は、お気軽にページ内お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

 

関連記事