カメラで使用するレンズの選択

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カメラのレンズマウント

カメラのレンズマウントと互換性のあるレンズを選択する必要があります。ほとんどのFLIR機器の視覚カメラは、CマウントまたはCSマウントのいずれかを搭載しています。また、5 mmのC-CSマウントスペーサー、M12レンズマウント、およびCS-M12アダプターも取り揃えています。

CマウントおよびCSマウントカメラのフランジバック距離

CマウントおよびCSマウントのレンズはどちらも、大半の産業用CCDカメラやレンズで採用されているねじ式レンズマウントです。CマウントとCSマウント装置の違いは、レンズのフランジ(カメラに接合するケースの部分)と、レンズの焦点面(CCDセンサーが設置されるべき位置)との距離にあります。この距離は、フランジバック距離と呼ばれます。

一般的なCマウントまたはCSマウントレンズの図

フランジバック距離のCマウントレンズの仕様は17.53mm、CSマウントレンズは12.53mmです。ただし、FLIRカメラでは、1 mmの赤外線カットオフ(IRC)フィルターおよび0.5 mmのセンサーパッケージウィンドウの両方が存在するため、これらの物理的距離はオフセットされます。これらの2枚のガラスは、レンズとセンサーイメージプレーンの間に取り付けられます。IRCフィルターは、FLIRによってカラーカメラに装着されています。モノクロカメラでは、IRCフィルターは透明なガラスに置き換えられています。センサーパッケージウィンドウは、センサーの製造元によって装着されています。これらのガラス部品で屈折するため、フランジバック距離を通常の値から補正する必要があります。

CSマウントカメラとCマウントレンズを所有している場合は、5 mmスペーサーを追加することで、正確な焦点が得られます。しかし、CマウントカメラとCSマウントレンズを所有している場合は、正確な焦点を得ることはできません。

M12マイクロレンズとの互換性

M12(Sマウントとも呼ばれることがある)光学系は、CマウントやCSマウントの光学系に比べて、サイズが小さく、C金属が低く、レンズ、CS-M12アダプター、そしてM12レンズマウントがプリインストールされた一部のカメラなどでよく使われています。

FLIRのキャストメタルM12レンズホルダーは、亜鉛合金で作られており、Sony ICX445 CCDやSony IMX035 CMOSなど、より大きなフォーマットのセンサーに装着されるように設計されています。さらに、後側焦点距離を調節する位置決めねじ、カメラの回路基板に対してレンズホルダーを正確に調節するドエルピン、IRCフィルターも含まれます。

また、FLIRは、CSマウントレンズホルダーの搭載されたカメラにM12レンズを取り付ける際に役立つ、CS-M12レンズアダプターも用意しています。

特定の広角(焦点距離が短い)M12レンズとは、互換性に問題がある場合があります。互換性問題は、次に説明するように、主に後側焦点距離の違いによるものです。

レンズの焦点を合わせるために必要な距離がレンズホルダーの長さよりも長いため、焦点を合わせるためには、レンズをホルダーから外す必要があります。

レンズの焦点を合わせるために必要な距離がレンズホルダーの長さよりも短くなります。レンズをいっぱいまでレンズホルダーにねじ込んでも、イメージの焦点は合いません。

マイクロレンズは、焦点が合う距離の手前でIRフィルターに到達する可能性があります。

マイクロレンズは、焦点が合うかもしれませんが、レンズの位置決めねじで所定位置に固定するには短すぎます。

レンズの焦点距離

レンズを選択する上で重要なもう1つの考慮事項は、焦点距離です。焦点距離がセンサーフォーマットの対角線のサイズとほぼ等しいレンズは、通常人間の目で自然に見える視野を再現します。焦点距離が通常よりも短く、‘「広角」’レンズとも呼ばれるレンズは、より広い視野を捉えることができます。焦点距離が通常よりも長いレンズ、すなわち‘「望遠」’レンズは、より狭い視野を捉えます。そのため、焦点距離を検討する場合は、センサーサイズ、捉えたい視野、および対象物体から大体どのくらい離れた位置にレンズがあるか‘(撮影距離)’を考慮する必要があります。

焦点とは、光軸と平行なすべての入射光線が交差する光軸上の位置です。シーンの同じ点を起点とするすべての光線が、イメージプレーン上のまさに同じ点で交差するように屈折した場合に、焦点が合います。この概念は、以下の図に示されます。対称レンズでは、焦点FとF’ がレンズから等距離にあります。Fを通過した光線は、イメージプレーンに到達する前に、光軸と平行になるように屈折します。

焦点距離、撮影距離、およびイメージ距離の関係は、次のガウスのレンズ公式から求められます:

多くのイメージングアプリケーションでは、撮影距離はイメージ距離よりも遥かに長くなります。その場合、上記の式は次のように近似できます:

イメージ距離は、焦点距離とほぼ等しいことが分かります。この場合の簡素化された光線図を次に示します。センサーの縁を起点とする主光線のみが描かれています。これらの光線は、方向を変えずに、レンズの中心を通過します。

この場合の焦点距離の近似値は、次の式から求められます:

撮影距離が焦点距離よりもそれほど長くない、マクロ撮影などのクローズアップアプリケーションでは、イメージ距離を焦点距離に近似することはできません。上記の式をより正確に表したもの(撮影距離が短いものと長いもの、双方に適用できるもの)が、次の式です:

多くのレンズベンダーは、Webサイトで、レンズを選択するための計算機能を提供しています。計算機能では、焦点距離を求める近似式に基づき、推奨の焦点距離を算出しています。計算は単純であることから、計算機能の結果に疑問を抱く場合は、センサーの寸法を用いて手作業で算出できます。センサーのサイズは通常、インチを単位とした分数で表され、歴史的な経緯から、センサーの有効なイメージング領域の実際のサイズに直接変換’できません。次の表には、複数の標準的なセンサーの幅、高さ、対角線のサイズが示されています。

たとえば、1/2インチセンサー、100 mmの作業距離、50 mmの水平視野を使用するアプリケーションについて考えてみましょう。表を見ると、1/2インチセンサーの幅は6.4mm、高さは4.8mm、対角線は8mmです。指定した水平視野を得るために、以下を使用します。

または、正確な次の式を使用します:

正確な式を使用した場合の焦点距離は11.3 mm、近似式を使用した場合の焦点距離は12.8 mmとなりました。この差は、焦点距離に対して撮影距離が短くなるにつれ増加します。

お客様の要件に最適な焦点距離を選択したら、必要な視野を得るために、撮影距離を調整する必要があるかもしれません。また、焦点距離が短いレンズでは、通常歪みが顕著に見られることを心に留めておいてください。実際の歪みの程度は、使用する特定のレンズによって異なり、実視野に相当な影響を及ぼす可能性があります。上記の式では、歪みは考慮されていません。レンズの歪みが大きい(例えば10%を超える)場合、上記の式は焦点距離の予測においては不正確であり、最初の段階でのみ使用されるべきです。レンズのデータシートを参照してください。視野角は通常、レンズがサポートする各センサーフォーマットにおいて、広角レンズと魚眼レンズで指定されます。この視野角を使用して、ある視野に対する撮影距離を距離の単位で計算する必要があります。

センサーのサイズ

レンズを購入する際は、お客様のカメラで使用されているイメージセンサーの光学サイズ(1/3インチ、2/3インチなど)と適合することを確認してください。レンズは、センサー全体を網羅するイメージを投影できなければなりません。より大型のフォーマットセンサー(2/3インチなど)向けに製造されたレンズは、通常はより小型のフォーマットセンサー(1/3インチなど)でも使用できますが、解像度が失われる可能性があります(下記参照)。

より小型のセンサー(1/3インチなど)向けに製造されたレンズは、より大型のセンサー(1/2インチなど)で使用することができません。レンズが、センサー全体を網羅する十分な大きさのイメージを投影できない可能性が高いためです。そのような場合、画像の輪郭がぼやけたり、暗くなったり、あるいは真っ黒になる可能性さえもあります。

次の表は、さまざまなサイズのセンサーにおける有効領域のおおよその幅(W)、高さ(H)、対角線(D)と、特定のレンズをより小型のセンサーで使用した場合のクロップファクターを示しています。例えば、1/3インチセンサーと6 mmレンズを組み合わせて使用している場合に、1/4インチセンサーでは、どのレンズが同じ視野を実現するのかを知りたいとします。1/4インチセンサーに対する1/3インチセンサーのクロップファクターは、1.33です。よって、6 mm / 1.33 = 4.5 mmの焦点距離を選択します。

寸法(mm

以下のセンサー向けに製造されたレンズを使用したクロップファクター…

センサー

高さ

対角線

1/4"

1/3"

1/2"

1/1.8"

2/3"

1"

1/4"

3.6

2.7

4.5

1

1.33

1.78

2.00

2.44

3.56

1/3"

4.8

3.6

6

1

1.33

1.50

1.83

2.67

1/2"

6.4

4.8

8

1

1.13

1.38

2.00

1/1.8"

7.1

5.4

9

1

1.22

1.78

2/3"

8.8

6.6

11

1

1.45

1"

12.8

9.6

16

1

センサーの空間解像度とメガピクセルレンズ

レンズを選択する上で重要なもう1つの要素は、センサー領域全体に対するピクセル数です。この数字は、通常ピクセル(ユニットセル)サイズに反比例します。ピクセル数が大きいほど、個々のピクセルは小さくなり、相互に接近します。同様に、センサーのピクセルが小さいほど、細部までより正確に記録(サンプリング)できます。この機能は、空間周波数または空間解像度と呼ばれます。高密度のセンサーには、高品質の光学部品を搭載し、センサーと同じ、またはセンサーよりも高い解像度でイメージを投影できるメガピクセル(MP)レンズが必要です。

次の表は、FLIRのカメラで使用されるセンサーの例と、それらのセンサーでMPレンズを使用する必要があるかどうかを示しています。メガピクセルセンサーでは、MPレンズを使用するのが望ましいでしょう。マルチメガピクセルセンサーでは、レンズのMP率が、センサーのMP数を満たすか、または超える必要があります。メガピクセルセンサーで通常のレンズを使用すると、レンズがセンサーに十分な解像度を提供しないために、イメージがぼやける可能性があります。メガピクセル以外のセンサーとともにMPレンズを使用しても構いませんが、費用対効果の観点から実用的ではないでしょう。

センサー

サイズ

Width

Height

ピクセル(MP)数

ピクセルサイズ(平方µm)

lpm

メガピクセルレンズの必要性

(ピクセル)

(ピクセル)

ICX618

1/4”

648

488

0.3

5.6

89

いいえ

ICX424

1/3”

648

488

0.3

7.4

68

いいえ

ICX414

1/2”

648

488

0.3

9.9

51

いいえ

ICX204

1/3”

1032

776

0.8

4.65

108

1 MPを推奨

ICX445

1/3”

1296

964

1.3

3.75

133

1 MPを推奨

ICX267

1/2”

1392

1032

1.4

4.65

108

1 MPを推奨

ICX274

1/1.8”

1624

1224

2.0

4.4

114

2 MPを推奨

ICX655

2/3”

2448

2048

5.0

3.45

145

5 MPを推奨

IMX250

2/3”

2448

2048

5.0

3.45

145

5 MPを推奨

ICX694

1”

2736

2192

6.0

4.54

110

5 MPを推奨

IMX255

1”

4096

2160

8.9

3.45

145

12 MPを推奨

IMX172

1/2.3”

4000

3000

12.0

1.55

323

12 MPを推奨

IMX253

1.1”

4096

3000

12.3

3.45

145

12 MPを推奨

IMX183

1”

5472

3648

20.0

2.4

208

12 MPを推奨

最適なパフォーマンスを得るために、レンズフォーマットがセンサーフォーマットとも一致することが理想です。例えば、1 MP 2/3インチフォーマットレンズを、1 MP 1/3インチセンサーで使用した場合、センサーがレンズによって生成された、すべての細部の一部のみを捉えるため、解像度が期待を下回る可能性があります。1 MP 1/3インチレンズは、センサー領域がより小さいため、同じ1 MPに相当するイメージ内容を捉える際には、1 MP 2/3インチレンズよりも高い解像度を実現します。センサーの空間解像度は、1 mmあたりの行ペア(lpmまたはlp/mm)で測定されます。これは、センサーが解像できる黒いバーと白いバーの最も小さい反復ペアを表しています。ピクセルサイズが3.75マイクロメートルのSony ICX445など、1/3インチ1.3 MPセンサーは、最大で133 lpm(1/3.75 µm x 1/2 x 1000 µm/mm)を解像できます。MPレンズは、Sony ICX445(1/3インチ1.3 MP)やSony ICX655(2/3インチ5 MP)といった小型フォーマットメガピクセルセンサーの高いピクセル密度を活用して、より詳細なイメージを投影できます。

レンズの解像度は、通常は、異なるピッチ(lpm)の黒いバーと白いバーのイメージングセットにより測定されます。解像できる(センサーの)最も細かいピッチがレンズの解像度と見なされます。この解像度に2を掛け(行のペアを行に変換するため)、次にセンサーサイズの寸法を掛けることで、レンズのMP率を決定します。この種の測定法には、いくつかの落とし穴があります。まず、レンズの解像度は視野全体で異なるため(通常はイメージの中心近くが最も高い解像度)、解像度が測定される場所によってMP率が大きく左右されます。2つ目の落とし穴は、“「解像された」” という認識にあります。そのような認識は、試験者ごとに異なる可能性があるためです。さらに、2つのレンズが133 lpmを解像し、MP率が同じ場合も、これらのレンズが、例えば60 lpmでも、同じコントラストを確実に実現するとは限りません。そのため、MP率が、必ずしもすべてを表しているわけではありません。

レンズの解像度のより体系的な測定法は、変調伝達関数(MTF)です。MTFは、ある空間周波数で黒と白の間を滑らかに繰り返す正弦パターンイメージの振幅(コントラスト)を、cycles/mm(lp/mmまたはlpmと呼ばれる場合もあります)で測定します。パターンの空間周波数が高いほど、イメージが一様に灰色にぼやける可能性が高くなります。この測定から得られる名目上の“「解像度」”は、コントラストが、電気回路の帯域幅と類似した、ある割合の低周波コントラストに落ちる周波数です。これは通常、MTF50(50%の低周波コントラスト)、またはMTF30(30%の低周波コントラスト)と表現されます。時にはMTF10も使用され、バーのパターンから取得された“「やっと解像される」” 解像度とほぼ同値です(上記参照)。MTF10は、確実な測定が困難であることから、使用には注意が必要です。もう1つの測定基準は、イメージにおける光線位置の関数として示される、限られた特定周波数一式でコントラストを測定することです。MTFデータからは、レンズの品質に関する情報を、単純なMP率よりも遥かに詳細に得ることができますが、データの解釈はより複雑であり、データを常に利用できるとは限りません。

※MTF測定は、ポイントスプレッドやスラントエッジ解析などの他の方法でも測定できます。

その他のリソース

説明

リンク

FLIRが提供するレンズホルダー、アダプター、スペーサー

製品アクセサリーのサイト

レンズ計算機能

レンズ計算機能

レンズの解像度とMTFに関する追加情報

http://www.cambridgeincolour.com/tutorials/lens-quality-mtf-resolution.htm

イメージセンサーサイズに関する追加情報

http://www.dpreview.com/articles/8095816568/sensorsizes