ガス漏れ検知用赤外線(OGI)カメラを最大限に活用するためのヒント

はじめに

ガス漏れ検知用赤外線(OGI)カメラは、スペクトル波長フィルタリングとスターリングクーラー冷却フィルタリング技術を活用することによって、メタン(CH4)/六フッ化硫黄(SF6)/二酸化炭素(CO2)/冷媒ガスなどの赤外線吸収を可視化することができます。 フリアーシステムズは、様々なタイプのカメラモデルを取り揃えています。各モデルには、可視化の対象となる各ガスのスペクトル吸収に適したフィルタがそれぞれ備えられています。

OGI技術の活用により、安全性と効率性の高い「スマートLDAR」(ガス漏れの検知・修復機能)プログラムを石油・ガス業界へ導入することができます。 点検者が漏出による排出ガスを素早く検知し、漏出源を速やかに特定できるため、修復対応の迅速化/産業廃棄物の削減/規制への適合性の向上などを実現できます。 さらに、OGI技術には、効率性の高さだけでなく、企業の人員や資源の安全性の向上によって経費削減を実現できるといった、より大きなメリットもあります。

FLIR GFx320 OGI カメラは、石油およびガス産業で使用されるほとんどの炭化水素を可視化し、本質安全指定を受けています

以下の各ヒントを参考にして、OGIカメラを最大限にご活用ください:

1. 用途とニーズを理解する

用途が違えば、必要なカメラも異なります。 つまり、1機種のカメラだけであらゆるガスの可視化が行えるわけではないため、取り扱う「ガスのタイプ」を予め把握しておく必要があります。 例えば、揮発性有機化合物(VOC)/炭化水素のガス漏れ検知用赤外線カメラでは、六フッ化硫黄(SF6)の可視化が行えません。また、COカメラでは冷媒ガスを可視化することができません。

2. 環境条件を考慮に入れる

光学ガスイメージング成功の鍵は、環境面の条件です。 周囲とのエネルギーの差が高いほど、カメラは、ガス漏れの可視化やガス発生源の特定を容易に行うことができます。 アクティブ型のOGI(レーザー光の後方散乱を利用したガス漏れ検知)は、表面の反射率の影響を受けます。 そのため、高位置にある部品を視覚化するためにカメラを上空へ向けた場合、検査は極めて困難になります。 また、雨や強風の影響についても考慮しておく必要があります。 通常、雨天時には検知作業が極めて困難になり得ます。ただし、風のある状況下では、ガスが風により移動するため、ガスを可視化しやすくなるケースもあります。

GFx320/GF320 カメラは、このコンプレッサー バルブの漏れなど、天然ガスの排出を検出できます。

3. ガス検知用赤外線カメラによる検査は、定量的ではなく定性的*

環境要因や周囲とのエネルギーの差・変動に影響を受けるため、OGIカメラ単独ではガス漏れのタイプ/量を正確に特定することはできません。

4.  ガス検知用赤外線カメラカメラのあらゆる機能を有効に活用

OGIカメラの各機能(自動GPS情報タグ付けや画像補正など)の役割を理解した上で、各機能を有効にご利用ください。 ガスの濃度が低いと、OGIカメラを使用してもガスを可視化できない場合があります。 こうした場合、高感度モード(HSM)を使用すれば、低濃度のガスでも可視化が行えます。 GPS情報のタグ付けなどの表示機能は重要性が高く、これにより問題のある設備に適切な修復を行えるようになります。

5.  的確な温度測定

一般的なOGIカメラは温度校正処理がなされているため、多目的用途に対応したシステムとなっています。 OGIカメラは、シーン全体の温度の測定/記録を行い、データをJPEG画像や動画形式で保存できるため、産業保守点検の用途に最適です。 OGIカメラを使えば、電圧の高低を気にせずに様々な電気設備や機械設備におけるホットスポットや電気的問題の検出を行い、配管やオーブンなどの断熱不良箇所の発見などの多様な検出用途に対応することができます。

FLIR GF306 を使用したガス検知用赤外線カメラは、配管または回路遮断器からの SF6 漏れを検出できます

また、OGIカメラのサーモグラフィ機能には、ガス雲とその周囲の視覚的コントラストを向上させる効果もあります。 検出対象物であるガスは、(他の熱画像化の用途とは異なり)目に見えるものではありません。 そのため、ガス雲と周囲との間に明瞭なコントラストを作り出さなければ、ガス雲を可視化することはできません。 ガス雲自体には、放射線を反射する性質はほとんどありません。 ガス雲を可視化するには、ガス雲と周囲の温度差(ΔT)を増大させることが不可欠となります。

6. カメラの利点活用して安全性を確保する

ガス検知用赤外線カメラを使用すれば、危険性の高い場所や手の届きにくい場所でも、作業者が直接手を触れずに迅速にガス漏れ箇所を検出することができます。 ガス検知用赤外線カメラは非常に感度が高いため、数メートル以内の小規模な漏出も、数百メートル先の大規模な漏出も検出できます。 多くのガス検知用赤外線カメラには、高感度モード(HSM)などの視覚補正機能が備えられており、少量/低濃度の漏出の検出能力が向上します。

安全な距離を確保しながらガス排出を検出できるという、OGIの持つ利点を大いにご活用ください。 まず、主要作業エリアの外側をスキャンした後、主要作業エリアの初回スキャンを行い大規模なガス漏れが可視化できるかどうか確認します。 その後、さらに現場に接近して詳細なスキャンを行います。 必ず、適切な安全具を装着した上で、OGIカメラは付属ケースに入れた状態で保管/輸送を行ってください。 また、カメラ本体に安全上の問題が発生しないように、常にカメラをメンテナンスしておきます。

7. 使用には認可が必要

OGIカメラは、一般的に、爆発性ATEXゾーン1適合品認証を受けていません。 そのため、火気使用作業の認可または作業計画に対する認可を受けてから使用する必要があります。

圧力計が化学製造のガス副産物を漏らす

 一部の製造業者のガイドラインは、火気使用作業の認可なしでOGIカメラをゾーン2で使用することを認めています。

つまり、深刻かつ危険な漏出が発生した場合でも、最高品質のOGIカメラを使用すれば、安全区域から(施設の外周側からでも)ガスの可視化が行えるようになります。

8.  投資対効果の認識

OGIカメラを運用した場合、通常であれば、運用の初日から投資対効果を得られます。 OGIカメラを用いて検査を実施すると、通常、従来の方法より9倍も早くガス漏れを発見でき、さらにガス探知機では見逃しかねないガス漏れ箇所も検出することができます。

また、OGIカメラでは、作業者が直接手を触れず漏出を検出できる「非接触方式」が取られ、通常の業務体制のまま検出を行えるため、施設の操業停止による企業収益の損失も発生しません。 また、早期に漏出を検知して迅速に修復することにより、企業罰則の発生を防止できるだけでなく、販売用ガスの損失量を抑え、さらなる収益に繋げることができます。

9. 今後の産業排出ガス規制を考慮に入れる

漏出による排出ガスは地球温暖化に影響を及ぼし、また作業者と施設周辺の住人いずれにも致命的なリスクをもたらす恐れがあります。 フリアーシステムズのOGIカメラは、数十種類にもわたる様々な揮発性有機化合物(ベンゼンなど)の検出に対応するため、導入企業は既存の産業排出ガス規制に準拠できるだけでなく、より健全な環境作りに貢献することができます。 ただし、現行の産業排出ガス規制は、今後変更される可能性もあります。つまり、漏出によるガス排出に関する規制は、米国環境保護庁やEU産業排出指令などの政府規制当局によって、今後さらに厳格化される可能性が常にあると言えます。 産業排出ガス規制に準拠した適切なツールを入手することによって、企業の将来性を飛躍的に高めることができます。

 

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