サーモグラフィカメラ活用事例:雨漏現場の診断をアシストする見える化技術

一般社団法人赤外線サーモグラフィ雨漏調査協会

アプリケーションストーリー

一般社団法人赤外線サーモグラフィ雨漏調査協会は、20年来の雨漏り調査実績がある会社の技術を広める為に設立。サーモグラフィカメラのアプリケーションにおいて雨漏り診断と聞くと「現場経験がものを言う」「なかなか直らない」「原因究明が難しい」など、診断としても事業としても難易度が高いように見受けられます。本アプリケーションストーリーでは雨漏り診断でのサーモグラフィカメラの使用方法や協会の設立の背景などについて代表理事の越口氏に話を伺いました。

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赤外線サーモグラフィ雨漏調査協会理事 越口氏

 

FLIR:雨漏り診断というと数多くの現場経験が求められそうなイメージがありますがこれまでの経験について教えてください。


越口氏:私は日本のメーカーで赤外線の基礎技術を学んだ後、サーモグラフィカメラのコンサルタント会社で工場やビルなどの電気設備の診断からマンションや一戸建てなどの雨漏り調査をはじめとした建築物診断まで、赤外線技術を軸に様々な診断に関わってきました。

FLIR:同じ診断でも電気設備と建築物では全く異なるように感じますが共通点はあるのでしょうか?

越口氏:サーモグラフィカメラを使用することで人が感知できないものを可視化できるという点は共通ですが、異なる点も多いです。建築物の場合は構造物内側に廻った水の温度分布を可視化することで診断に有効である反面、赤外線の特性に起因して発生するサーモグラフィ計測の難しさもよく理解したうえで使用しなければ間違った判断を下してしまうことがあります。

FLIR:協会はどのような背景から設立されたのでしょうか?
越口氏:なかなか止まらない雨漏りをなんとかしたいという思いで雨漏り診断を生業とされている方が多いかと思いますが、経験と勘が左右する面が大きいので再現性のある技術的な要素でできるだけ不確実性を減らしたいと考えました。協会ではサーモグラフィカメラを使用する赤外線の技術に加えて、紫外線領域の技術を応用して雨漏りにアプローチします。

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越口氏は、赤外線メーカーで赤外線技術を学び、企画・販売業務、その後のコンサル会社での点検調査業務、報告書作成などサーモグラフィに関する幅広い知識と経験を網羅している。

 

FLIR:なぜ2つの技術が必要なのでしょうか。
越口氏:サーモグラフィカメラを検討されるお客様から「降雨後何日位までサーモグラフィカメラで見ることができますか?」といった質問を受けたことがありませんか?

FLIR:まさにそういった質問を受けることがあります。
越口氏:協会では雨漏りの根本解決には、現場で雨漏りを再現させる調査が必要と考えています。そのためには住宅がドライな環境から雨漏りを再現する必要があります。我々が現場に入ったらまず行うことは、サーモグラフィカメラによって雨漏りがない状況を記録しておくことです。

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はじめに現場状況をサーモグラフィカメラで記録し水の浸入(低温部)がないことを確認

 

ドライ環境であることを確認できてから散水試験に移行し、外から作業員が散水を開始したら、建屋内でもう1名の作業員がサーモグラフィカメラによって水の侵入を監視します。比較的早いタイミングでサーモグラフィカメラで水の侵入を認めた場合は、水の移動距離が短く、簡単な雨漏りであることが多く、このような時はサーモグラフィカメラのみで雨漏り診断を完了させることも可能です。
2つ目の紫外線についてはサーモグラフィカメラだけで完結しない場合や難易度の高い場合などに
適用することが多くなります。ブラックライトに反応する数色の蛍光液(水の経路を識別するために色を分けてある)を散水場所別に水に混ぜることで、色による経路確定を行うものです。

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紫外線反応液を散水(無色透明・人体に無害)、紫外線反応液はブラックライト照射時のみ色を識別可能。

建屋内の雨漏り箇所を可視化するのがサーモグラフィカメラで、侵入口の特定をするのが紫外線反応液となり、入り口と出口を紐づけし、答え合わせをしていることになります。

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FLIR:これらの技術を導入することで施主にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか?
越口氏:水の侵入箇所と部屋内の雨漏り箇所が紐づけされ、雨漏りの原因が目に見える情報として記録に残されます。また散水範囲を限定することで、水の侵入の被害を最小限にできるうえ、壁面を剥がす作業を回避できるなど最小限のダメージでできることがポイントになるかと思います。


FLIR:サーモグラフィカメラはどのようなものを使用しているのでしょうか。
越口氏:建築の用途では電気設備とは違い対象物が発熱しないため、ノイズが少なく感度が高いものが適しています。また室内では腰より上の位置を見る場合に無理のない姿勢で長時間撮影できるよう、レンズ部が独立して上面を向けられるようなものが良いと思います。また予算が許せば解像度の高いカメラほど診断を助けてくれます。


FLIR:最後に協会の活動、役割について教えてください。
越口氏:当協会では、雨漏りの原因を突き止めるまで、最後まで責任をもって調査しています。協会自体の設立は新しいのですが、前身の調査会社の時代から新築物件で長年解決しなかった雨漏りや、台風や大雨時にのみ発生し原因がわからないなど長年に渡りお困り事だった雨漏りの原因を突き止め、施主様より感謝の言葉を頂いてきました。また工務店様等で雨漏り調査を外部に依頼したが解決されなかった、修繕したが直らなかった等のご相談も対応しています。
赤外線と紫外線反応の2つ組み合わせた技術を使用して雨漏り調査のみに特化した協会であり、安心して調査を任せていただけるよう技術講習と体制を構築していきます。

 

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