サーモグラフィと体温計の違いとは?サーモグラフィカメラのメリットや選び方

新型コロナウイルス発生後、オフィスやデパートの入り口にサーモグラフィカメラを設置する企業が増加しました。しかし、サーモグラフィと体温計の違いを理解しないまま導入を進めてしまうと、サーモグラフィカメラのメリットを最大限に発揮できなくなるため、注意が必要です。

そこで本記事では、サーモグラフィと体温計の違いを紹介するとともに、サーモグラフィカメラのメリットや選び方、活用場面などを解説していきます。

サーモグラフィとは

サーモグラフィとは、「温度を見える化」する計測装置です。具体的には、人や物体の表面温度が高い部分を赤く、低い部分を青くするなど、計測した温度に合わせて画像処理をおこない、温度分布を視覚的にわかりやすく表示させる装置です。サーモグラフィを使えば、人の目ではわからない温度を色で判別できるようになります。

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サーモグラフィカメラとは

サーモグラフィの技術を使って熱や温度差を検知するカメラが「サーモグラフィカメラ」です。サーモカメラ、サーマルカメラなどとも呼ばれ、主に以下の5タイプが存在します。

・スタンド型:詳細はこちら

・カメラ型:詳細はこちら

・ハンディー型(ハンドヘルド型):詳細はこちら

・ドーム型(防犯カメラ型):詳細はこちら

・スマホ装着型:詳細はこちら

上記に共通しているのは、赤外線を検出するセンサーを搭載していることです。赤外線センサーが搭載されていないスマ-トフォンにも関わらず、アプリだけでサーモグラフィ風の画像が撮影できることを謳っているものがあります。これらで撮影した映像は当然のことながら温度計測はしておらず映像から熱や温度差を判別することはできないため、使用には注意が必要です。

サーモグラフィの仕組みとは

サーモグラフィは赤外線を検出するセンサーで、対象物の表面温度を計測するものです。物体は、熱を持つのと同時に赤外線を放出します。温度が高い物体からは強い赤外線が、温度が低い物体からは弱い赤外線が放出されます。サーモグラフィはその温度差を検知し、赤(高い温度)と青(低い温度)に色分けして表示することで、「温度の見える化」を実現しているのです。また、赤外線で温度差を検知できるため、対象物と離れた位置から一度に広範囲の計測ができます。

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サーモグラフィと体温計の違い

体温計は対象物や測定部位の温度を計測する機器であるのに対し、サーモグラフィは赤外線の量から表面温度を計測する機器です。

両者の違いを理解するために、体温計の仕組みを簡単に紹介します。個人が体温を測るときに利用する電子体温計は、実測式と予測式の2種類の測り方があります。実測式は、体温計に触れている物体の熱をそのまま測る方法です。温度が上がりきった状態になるまで検温する必要があるため、時間を要するものの、正確な体温が測れます。一方、予測式は名前のとおり体温を予測する検温方法です。体温計の温度上昇率をもとに予測体温を算出します。短時間で熱を測定できるため、市販されている電子体温計のほとんどは予測式を用いています。

要するに、体温計は体温の確認に特化した機器ということです。対象に直接触れることで温度を計測します。一方、サーモグラフィは対象物が発する赤外線を分析し、表面温度を可視化するものです。体温計測だけでなく、食べ物の温度管理や建築物の不備チェック、国境や海上の監視といった幅広いシーンで使われています。EST on camera.jpg

サーモグラフィカメラを使うメリット

サーモグラフィカメラには、大きく以下の6つのメリットがあります。

・非接触での計測

・計測範囲の広さ

・暗所や逆光に強い

・リアルタイムかつ効率的な計測

・マンパワーを必要としない

・異常時のアラート通知機能

ひとつずつ解説していきます。

メリット1:非接触での計測

温度計や体温計などの測定機器の場合、計測箇所に接近して温度を計測する必要があります。対象が不特定多数であったり、移動中であったりした場合だと、体温計で一人ひとり検温するのは難しいでしょう。サーモグラフィカメラであれば、非接触でヒトの体表面や物体の表面温度を計測可能です。カメラの画面上に映った対象物の中から、熱の発生源を容易に検知できます。

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メリット2:計測範囲の広さ

サーモグラフィカメラは画面上に映る対象物すべての表面温度を一度に確認できるため、複数人を同時に検温することや、肉眼では判別できないわずかな温度変化を検知できます。不特定多数の中から時間をかけずに発熱者を発見したい場合には、サーモグラフィカメラがおすすめです。

メリット3:暗所や逆光に強い

一般的なカメラは、物体が発する光を利用して画像や映像を撮影します。つまり、鮮明な画像や映像を撮影するためには、光源が必要ということです。一方、サーモグラフィカメラは、物体が放出する赤外線を捉えて撮影します。そのため、暗所や逆光が強い場所においても、光源に左右されずに撮影(検温)が可能です。

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メリット4:リアルタイムかつ効率的な計測

サーモグラフィカメラは応答速度が速いことから、対象物の表面温度をリアルタイムに計測可能です。高速で動く物体の体表面温度の変化や、短時間で生じた急激な温度変化なども、サーモグラフィカメラであればスピーディーに把握できます。

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メリット5:マンパワーを必要としない

固定設置のサーモグラフィカメラは、監視員や検温スタッフがいなくても表面温度を計測できます。温度変化をリアルタイムに計測し、その結果を映像として保存できるため、トラブル発生後の記録確認も容易です。イベント会場やオフィスビルの出入口などにおいて、多くの人員を割くことなく検温と監視ができるため、人的コストの削減が期待できるでしょう。

メリット6:異常時のアラート通知機能

設定した温度以上の人や物体がサーモグラフィカメラで検知されると、サイレンやアラートで警告・通知してくれます。発熱者がいるときや、工場生産ラインで機器トラブルが発生したときなど、迅速な対応が求められるシーンでサーモグラフィカメラは役立ちます。

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サーモグラフィカメラの活用場面

サーモグラフィカメラは、主に以下のシーンで利用されています。

・オフィスの入退室管理

・電気やガスなど設備の点検

・住宅設備の点検や診断

・大きな会場やイベント会場の出入口

それぞれのシーンでどのように使用されているのか、具体的にみていきましょう。

オフィスの入退室管理

非接触でスピーディーに検温できる点や、高温の検知をアラームで警告できる点がサーモグラフィカメラの特長です。また、体温計による検温と異なり、使用するたびに機器を消毒したり、時間をかけて計測したりする必要がないため、検温にかかる人手やコストを削減できます。

人体に触れることなく体表面温度を測定し、目に見えない異常をオフィス入室前にスクリーニングできるため、測定者の感染リスクを軽減しながら入場者の体温チェックが可能です。

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電気やガスなど設備の点検

変電所の電気設備や化学工場のガス設備における点検・整備の場面でも、サーモグラフィカメラは活躍します

サーモグラフィカメラは、微妙な温度変化や異常な発熱を検知できるため、設備の故障や火災、非常トラブルなどが発生した場合に素早い対応が可能です。

住宅設備の点検や診断

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変電所や化学工場だけでなく、住宅設備の点検や診断でもサーモグラフィカメラが役立ちます

たとえば、壁面に断熱材が入っていない場所は外気温度が伝わりやすくなり、断熱材がある場所に比べて温度が低くなります。そのため、サーモグラフィカメラを使えば断熱材の有無が一目瞭然です。

また、床暖房に配管を使用している場合、温水の流れを床の上から計測することで配管の漏れや不良箇所を簡単にチェック可能です。

大きな会場やイベント会場の出入口

サーモグラフィカメラは、大きな会場やイベントの出入口での発熱者や異常な温度の検知に使われます。ほかにも空港や港湾では、不審者や不審な船の監視を目的に活用されています

新型コロナウイルスの流行を背景に、体温チェックの必要性は急速に高まりました。不特定多数の人が行き交う場では、発熱者をリアルタイムで検知し、迅速に対処する必要があります。そうした状況の中、非接触で検温・検知できるサーモグラフィカメラは、有効なチェック方法といえるでしょう。

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まとめ

サーモグラフィは対象物の遠赤外線エネルギーを検出し、肉眼では判別できない温度差を見える化する計測装置です。


サーモグラフィカメラを利用すれば、光源のない暗所や視界の悪い場所でも検温チェックが可能で、広範囲かつリアルタイムに対象の表面温度を計測できます。監視員や作業スタッフを常駐させずに、非接触かつスピーディーに検温できるため、オフィスの入退室や空港・港湾の出入国管理に有効です。

赤外線カメラのリーディングカンパニーであるフリアーシステムズでは、さまざまなタイプのサーモグラフィカメラを販売しています。サーモグラフィカメラの導入を検討している場合は、ぜひ気軽にお問い合わせください。

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