本質的に安全な設計のGFx320により、爆発性雰囲気におけるろ過装置の砂量を測定

水圧破砕法では、砂の注入により、油井の細孔の開口状態を維持します。 破砕後、油井が稼働状態に戻ると、砂の一部は地表面に返り、再度砂ろ過装置内へ入ります。 砂ろ過装置は地表面上にあり、内部炎管からの熱により石油、ガス、水が分離されます。 吸出されたガスはガスメータへ送達され、最終的に各家庭や企業・事業所に送られます。 石油と水は、施設タンク内に一時的に集積され、最終的にタンカーで輸送されます。 余剰の副生成物であるパラフィンと砂は、砂ろ過装置タンクや容器内に一旦集積されます。ただし、砂ろ過装置の炎管が甚大な損傷を受ける可能性もあるため、最終的には、全て除去する必要があります。 万が一、砂が原因で非フランジ型砂ろ過装置の炎管が崩壊した場合には、容器全体を交換するしかありません。 非フランジ型砂ろ過装置は、Noble Energy社の主力製品です。 比較的新型の高価なフランジ砂ろ過装置でないと、炎管の修理/交換には対応していません(FLIR GFx320は日本未発売品です)。

高コストで危険な障害

Doug Hess氏(Noble Energy社の「漏出の検出・修復(LDAR)」マネージャー)は、次のように述べています。「砂ろ過装置の平均価格は、約10万ドルです。 砂が堆積して発熱体に付着すると、最終的には発熱体が崩壊する事態に繋がり、砂ろ過装置自体に甚大な障害が発生する恐れがあります。 この場合、いずれも深刻な損害を招く、2つのケースが想定されます。 1つ目は、砂ろ過装置の外側でガス、石油、水が漏えいするケースです。 2つ目に、それによって火災に繋がるケースさえあります。」 砂を砂ろ過装置から排出するには、砂阻集器やろ過機構では全く効果がありませんでした。 砂を排出できないならば、直接除去するしかありません。 砂やパラフィンの温度は石油・ガス・水よりも低温であるという特質を利用して、当初、Noble Energy社の技術者は各容器の腹部を手で撫でて温度差を感知していました。 こうした不確実な検知法では、砂により損傷したタンクを正しく特定できず、検出結果を誤るケースもあります。そうなれば砂除去のために、メンテナンス作業者が無為に派遣されることになります。

砂の除去は手間のかかる作業です。

パラフィンの除去作業であれば、砂ろ過装置を加熱して抑制剤で処理するだけで済みますが、砂の除去作業はそう簡単にはいきません。 砂ろ過装置の稼働を一旦停止させた上で、ホース1本とバキュームカー車両1台を用いて2名の人員で作業を行う必要があります。 これは多大な労力を要する作業です。仮に、誤った検出結果を受けて本来不要な作業を実施すれば、生産高や人件費の損失に繋がります。 砂の堆積が原因で砂ろ過装置の交換を余儀なくされた場合、高額な費用が発生します。こうした事態を未然に防ぎ、砂ろ過装置の予防保全計画の効率化を図るため、Noble Energy社は、「本質的に安全な設計」のガス検知用赤外線カメラ、つまりFLIR GFx320を活用した「砂量測定法」を確立するに至りました。

ソリューション

Noble Energy社は、当初、既にフリアーシステムズのガス検知用赤外線(OGI)カメラを使用して、漏出の検知・修理(LDAR)プログラムを行っていました。 同社は赤外線カメラの導入により、コロラド州規制7 – 「オゾン前駆物質によるオゾン制御、および石油(排出物質)による炭化水素の制御」の遵守を達成しました。 同社の技術者は、既にこの時点で3万件を超える漏出検出を達成しており、赤外線カメラの操作法について熟知していました。 つまり、肉眼に見えないガス漏れ検出にそれまでチームが利用してきた技法が、同様に、砂ろ過装置の予防保全プログラムの推進にも有効であることが判明したのです。 「現在、当社で使用する熱画像技術カメラは非常に優秀であり、砂ろ過装置の分厚い金属壁の内部状況でさえ明確に可視化する能力があります。 石油は砂よりも温度が高いという特性があり、この温度差をうまく利用して砂ろ過装置本体に堆積が起きていないか判断できます」とHess氏は述べています。

Noble Energy社の砂量測定法

各タンクの温度設定点は、わずか数分間で収集できます。 カラーパレットのレインボーを使うと、温度の違いに応じて、対象が特定の色で示されます(図A、B)。 Noble Energy社のエンジニアのLandon Hawkins氏(砂量測定法の主要開発者)は言います。「コントラストの高いレインボーで識別することにより、技術者は温度差や範囲を高精度に把握できます。」 同氏は、まずFLIR GFx320カメラ(2台のうちの1台)を一脚に固定します。 砂ろ過装置タンクの「側面」を捉える位置にカメラを設置し、手動モードに切り替えて設定点を確定します。 砂ろ過装置のオイルバスの温度範囲は、通常、32~37.7℃です。 砂堆積物の温度は、周囲温度とほぼ同じ値です。 つまり、周囲温度が15.5℃の場合、オイルバスと砂堆積物の温度差は-1℃~4.4℃ということになります。 砂は容器の底部に堆積する傾向があります。一方、パラフィンは比較的粗目な輪郭であるため、容器の中央部に付着することが多いのです。 つまりパラフィンは容器の側面に付着しますが、砂は側面には付着しません。 Hawkins氏は、各砂ろ過装置の状態を追跡するため、各装置にシリアル番号を設けた監視プログラムを確立しました。 砂の堆積物が検知された砂ろ過装置は、監視プログラムの管理下に置かれることになります。 初回の破砕後は、砂の大半は砂ろ過装置内へ再び正常に取り込まれるため、特に問題はありません。ただ、新たに破砕した油井での砂ろ過装置は、慎重に観察する必要があります。

「本質的に安全な設計」は産業現場に不可欠

Noble Energy社は、監視プログラムの対象となる砂ろ過装置については、画像の比較検証を毎月行い、砂の堆積速度や砂除去作業を行うべきタイミングを判断しています。 砂の監視プログラムを正しく進める上で、重要な要素が2つあります。 第1に、砂ろ過装置周辺では火災リスクもあることから、監視カメラは「本質的に安全な設計」でなければなりません。 本質的に安全な防爆カメラでは、エネルギー(電気や熱)が非着火レベルにまで自動制御されるため、短絡や障害時でも火花の発生するリスクがありません。 本質的に安全なGFx320を使用することにより、Hawkins氏ら点検チームは、砂ろ過装置に近づいて様々な角度から装置を撮影できます。また、砂ろ過装置の表面が太陽光で加熱されるといった事態を未然に防ぐこともできます。 Hawkins氏は言います。「本質的に安全なカメラを導入する以前は、砂ろ過装置の周囲1.5メートル以内には接近できないため、タンク正面側しか撮影できないこともありました。」  

空撮写真からも分かるように、砂ろ過装置は緊密に配置されているため、容器へ人員が近づくことはほぼ不可能です。 「本質的に安全なカメラの導入により、管理プログラムの進め方が大きく変化しました。」とHess氏。 「以前はアクセスできなかった場所も、隅々まで徹底的に検査できるようになりました。」 また、各画像の形態が全体で統一されている必要もあります。つまり、画像の撮影・操作・画質処理等の作業は1人の撮影者が一貫して担当する必要があります。 「各状況の特徴を判定しやすいように、常に、一定の形態で撮影するようにしています。 画像の形態が共通していれば、各状況の差異を簡単に判別できます。 複数の作業員で測定を実施する場合、作業員ごとに解釈が異なることもあります」とHawkins氏は説明します。 2017年、Hawkins氏は、彼の管理プログラムの訓練を受けた人員と共に、7,000台以上にも及ぶ砂ろ過装置の評価を実施しました。 Hess氏は言います。「Hawkins氏の管理プログラムは非常に優れています。また彼は、自身の確立した管理プログラムを従業員たちに指導してきました。 Hawkins氏はまさに全管理プログラムの牽引役を担っています。」 7,000台以上の砂ろ過装置の分析が行われた結果、300台の装置を稼働停止させ、砂の除去作業を行いました。

検知精度100%を達成

Hawkins氏は彼のチームと共に、本質的に安全な設計のFLIR GFx320赤外線カメラを2台活用し、Noble Energy社の砂ろ過装置の予防保全プログラムの強化を図りました。 予防保全プログラムを確実に達成するには、赤外線カメラの使用経験も不可欠です。そこでHawkins氏は、赤外線カメラの使用経験のない技術者でも簡単に習得できるように、引き続き、手法の改善や実証に努めています。 砂が大量に堆積すると、炎管は即座にリスクにさらされることになります。監視プログラムの実施により、わずか1年間足らずで、こうしたリスク下にあるタンクを300も特定しました。つまり、赤外線カメラは、既に大きな投資効果を生み出していると言えます。 これら300のタンク内部に実際に障害が起きているか否か判定するには、まずタンクの砂を除去しなければなりません。 仮に、GFx320で監視を行い1件の障害を抑止しただけでも、メンテナンスチームは砂ろ過装置の交換費用(10万ドル)や不要な人件費を節減できたことになります。 カメラで砂を監視すれば一目瞭然です。 「これまでメンテナンスチームと共に、様々な砂除去作業を行ってきました。そのメンテナンスチームによれば、これまでの検出精度は100%であるとの主張でした。 しかし実際、私たちがこの検出法で特定した(砂除去をすべき)砂ろ過装置には、例外なく、大量の砂が堆積していました」とHess氏は述べています(FLIR GFx320は日本未発売品です)。

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