サーモグラフィカメラで韓国の石炭発電所の火災を防止

韓国にある唐津火力発電所(DCFPC)の石炭コンベアシステムで自然発火のリスクを回避するため、発電所を所有する韓国東西発電株式会社(EWP)は、サーモグラフィカメラをベースとした火災警報システムを設置しました。 石炭が燃焼する温度に上昇するはるか前に温度上昇を確認できるため、サーモグラフィカメラは発電所の安全性と発電の継続性を確保するのに役立っています。

大量の石炭が貯蔵庫や地下室、ホッパー、野外の置き場などに保管されますが、石炭は可燃性材料であるため、さまざまな状況で発火しやすくなります。 石炭火災が最も多く発生する最も危険な原因の1つが、自然発火なのです。 それは、石炭が保管や輸送されているあらゆる場所で発生する可能性があります。 石炭は、空気中の酸素によって酸化が始まります。 それが温度上昇の原因となります。 最初は石炭の温度が周囲温度よりわずかに高くなるだけですが、注意していないと400℃以上まで上昇することがあり、石炭から急に出火する原因となります。

また、燃焼前の酸化プロセスでは、石炭から大量のメタンと一酸化炭素ガスが発生します。 その有毒で爆発性のガスにより、消防士が石炭火災を消火することがさらに困難になることがあります。 したがって、そのような火災は早い段階で発見することが最も重要であり、それによって実際の火災を防止できます。 そのため、多くの石炭貯蔵プラントではサーモグラフィカメラによって機能を強化しているのです。 作動するために煙の発生が必要な煙探知機とは異なり、サーモグラフィ技術をベースとした早期警報システムでは、石炭が発火するはるか前に温度上昇を確認することができます。 この早期警報に基づいて温度上昇を抑える措置を講じることで、実際の燃焼とそれに続く破壊的な石炭火災を防止します。

石炭貯蔵プラントでの火災防止に対するサーマルイメージング技術の可能性に気付いている企業の1つが、韓国東西発電株式会社(EWP)です。 同社では、唐津火力発電所(DCFPC)を含む5か所の発電所を運転しています。 DCFPCには石炭を燃料とする8基のユニットがあり、その合計発電能力は4,000メガワットです。

危険を伴う石炭輸送

石炭をボイラーに輸送するために、長さ数キロメートルものコンベアベルトシステムが使用されます。 輸送中は、石炭が動かない保管施設に比べて自然発火の可能性がさらに高くなります。 軟炭が発火すると、発電所の作業員に危険が及びコンベアシステムの一部が破壊される可能性があるだけでなく、発電が完全に停止する原因となることもあります。 「そのような状況は許容できません」と、DCFPCの管理者Kim Young Min氏は語ります。 「そのため、当社ではフリアーシステムズのサーモグラフィカメラを多数設置しました。」

DCFPCの環境施設チームは、FLIR A310サーモグラフィカメラを中心に早期火災警報システムを構築することを選択しました。 「当社では、FLIR A310サーモグラフィカメラを導入する前に、このシステムを確実に機能させるために広範囲な試験を行っており、その結果に大変満足しています」と、Kim Young Min氏は説明します。 「FLIR A310サーモグラフィカメラを使用すれば非常にわずかな温度上昇も確認でき、それを自動的に通知できるだけでなく、自動スプリンクラーシステムを作動させることも可能です。 そのようにして、火災予防システムは石炭火災を自動的に防止または消火できるため、発電所の安全性を高めて発電の継続性を確保することができるのです。」

自動温度アラーム

1台のFLIR A310サーモグラフィカメラを保管場所の端に設置し、石炭がコンベアシステムに入る際に確認します。 石炭は秒速4メートルの速度でボイラーに輸送されるため、複数のFLIR A310サーモグラフィカメラを追加して輸送中の温度を確認します。 どこかの地点で石炭の温度が事前に設定したパラメーターを超えた場合には、アラームが鳴ります。

この早期警報システムには、全部で7台のFLIR A310サーモグラフィカメラが使用されています。 それらすべてのカメラが、標準のイーサネットケーブルでTCP/IPネットワークに接続されています。 FLIR A310サーモグラフィカメラからの赤外線データはネットワーク経由でプログラマブル論理制御装置(PLC)と共有され、FLIR A310サーモグラフィカメラの温度アラームが作動した場合には、コンベアベルトが直ちに停止してスプリンクラーシステムが作動します。

FLIR A310サーモグラフィカメラ

FLIR A310サーモグラフィカメラには、50 mK(0.05 ℃)の温度分解能で320x240ピクセルの解像度を持つ赤外線画像を生成する非冷却式マイクロボロメーター検出器が搭載されています。 また、スポット温度測定とエリア温度測定を行える内蔵された解析機能に加え、自動アラーム機能も搭載されています。

「当社がFLIR A310サーモグラフィカメラを選択したのは、カメラの品質だけでなく、既存のPLCとの統合が簡単だったからです」と、Kim Young Min氏は説明します。 「当社では、TCP/IPネットワークによる遠隔制御やPLCとのシームレスな統合といった機能を求めており、さらにアナログコンポジットビデオを使用して制御室で赤外線映像をライブ監視したいと考えていました。 FLIR A310サーモグラフィカメラは、それらすべての要件を非常に競争力の高い価格で満足するものでした。」

シームレスな統合

FLIR A310サーモグラフィカメラは、TCP/IP接続機能によってシステムへのシームレスな統合が可能です。 温度アラームが作動するとPLCが情報を残りのネットワークに伝達するため、音声とフラッシュによるアラームでスタッフに通知され、特定の責任者には電子メールまたはFTPによる個別の通知が届きます。 赤外線画像は、後で解析するためや証拠として使用するために記録されます。

また、フリアーシステムズのIR Monitorソフトウェアとソフトウェア開発キット(SDK)をベースにしたこのソフトウェアソリューションにより、温度グラフ解析と温度傾向解析も可能になります。 その自動温度アラームは、スポット温度や最低温度、最高温度、平均温度、特定エリアの関連温度など、複数のパラメーターに基づいています。

資産の保護

DCFPCの環境施設チームは、温度アラームを広範囲に試験することで、FLIR A310サーモグラフィカメラをベースとした火災警報システムの高い性能や信頼性、適用性などを検証しました。「当社は、サーモグラフィカメラをベースとした火災予防・消火システムによって当社の資産を保護し、経営効率をさらに高めることができると確信しています」と、Kim Young Min氏は締めくくりました。

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