赤外線サーマルシステムによる公共交通機関の安全性と効率性の改善

多くの方々が電車・地下鉄・路面電車等の公共交通機関を日々利用しており、鉄道利用は国内の主な移動方法として認知されています。 しかし、火災や人間の不注意な行為による事故は、遅延の発生、さらに車両や鉄道インフラへの甚大な損害に繋がる恐れがあります。 赤外線サーマルカメラでこうした事故をいち早く検知することにより、鉄道事業者は処置を迅速に講じることが可能です。

危険行動が原因で電車や地下鉄/路面電車の事故が毎年確認されています。 鉄道のスムーズな運行の妨げになる原因として、立ち入り禁止区域への侵入/踏切内での危険歩行/関連施設設備への落書き/酒酔いによる不注意な行動といったケースが挙げられます。

また踏切内においても、同様です。 踏切の誤った使用方法や利用者の不注意があった場合、深刻な事故に繋がる恐れがあります。 道路利用者の違反(踏切の遮断警告無視等)による接触事故も毎年確認されてます。 また、鉄道管理者や鉄道当局の間では、鉄道車両や地下鉄トンネルの火災安全対策への関心も高まっています。近年、世界各地で地下鉄トンネルの事故が多発しています。 トンネル内や鉄道車両で火災が発生すると、人々やインフラに壊滅的な打撃を与える恐れがあります。 火災により、最悪の場合、甚大な死亡事故/物的損害/重要なインフララインの断絶に繋がる恐れもあります。 つまり、効果的な防火/検知/制御を実施すれば、人命を救い、高額な損害の発生を未然に防ぐことができます。

CCTVカメラによる安全監視

事故発生防止のため、各鉄道会社は最大限の対策を講じています。 これまで鉄道分野の監視には、監視用CCTVカメラの利用が一般的とされていました。 監視用CCTVカメラは、画像解析と組み合わせることにより、道路利用者による危険行為を適時に検知し、管制室へリアルタイムに警告を行うことが可能です。また、オペレータは受け取った事象情報を用い、適切な措置を講じることができます。

CCTVカメラは信頼性の高いビデオ分析ツールですが、アルゴリズムの追加による様々な制限への対処が必要になります。 一例として、夜間にCCTVカメラでの画像解析を使用する場合、精度安定化のため、追加の照明設備が必要になることがあります。 また、CCTVカメラは、逆光や列車本体からの反射光が原因で映像が不鮮明化し、検知が正しく作動しない場合もあります。 あるいは、影になった場所やトンネル内を移動する車両や歩行者については、検知が困難な場合もあります。

 
 

事前に設定した検知ゾーン(詳細設定が可能)内に不審挙動が確認された際、検知結果や事故情報を作成します。

赤外線サーマルカメラによる安全監視

赤外線サーマルカメラは、検知対象物の微妙な温度差に基づいて鮮明な映像供給が可能であり、こうした制限を全て克服できます。つまり、暗闇/煙/霧/砂嵐といった特殊な環境条件に映像品質が左右されることがありません。 赤外線サーマルカメラは、映像取得のために光源を必要とせず、また逆光下でも鮮明な画像が得られるため、24時間365日安定した画像検知が可能です。

赤外線サーマルカメラは、可視領域を超えた赤外線(熱放射)を元に映像を生成します。 熱源情報を取得することにより、昼夜を問わず、またいかなる照明条件下でも常に鮮明な画像が得られます。 赤外線サーマルカメラの使用により、施設内への侵入者や踏切上で立ち往生する車両、およびホームからの転落者/トンネル内への侵入者歩行者を高精度で検知できるようになります。

赤外線サーマルカメラは、線路上を歩く人間の存在を検知し、道路情報表示装置(VMS)で運転手に危険状況を警告することができます。

赤外線サーマルカメラの使用により、鉄道事業者は、車両や歩行者を24時間体制で検知できるようになります。

FLIR ITSシリーズ Rail

赤外線サーマルカメラと検知器が一体となったFLIR ITSシリーズ Railは、公共交通機関の運行環境において危険な障害物を速やかに検知する能力があります。 このカメラは、以下のような様々な用途において24時間365日体制で検知を行えます。

  • 人間の検知: FLIR ITSシリーズ Railは、駅のプラットフォームから落下した乗客や、トンネル内へ侵入する人物、また線路上を歩く人々を的確に検知する能力があります。ただし、小動物や通過列車といった人間以外の対象は検知から外されます。
  • 踏切の障害物の検知:  FLIR ITSシリーズ Railは、踏切上で立ち往生する車両を素早く検知して列車を停止させることにより、衝突事故を未然に防ぐことができます。
  • トンネル内の火災検知: FLIR ITSシリーズ Railは、カメラ視野内のあらゆる物体温度を測定し、火災発生を早期検知する能力があります。 カメラは、物理的に煙自体に接触せず、火災や異常事態により発生した過熱を検知できます。 つまり、従来の火災検知システムの作動時間よりはるかに素早く、わずか数秒で火災を検知できます。
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線路上/ホーム上/トンネル内対象物の検知

赤外線サーマルカメラで、電車/路面電車/地下鉄利用者、またトンネル内侵入者や線路上違反歩行者を正しく検知することによって、運航管理センターへ、検知情報を通知することができます。 事前に設定した検知ゾーン(詳細設定が可能)内に不審挙動が確認された際、検知結果や事故情報を作成します。 赤外線サーマルカメラは、既存の照明設備からの影響を一切受けないため、トンネル内においても24時間365日安定した検知が可能となります。 また、トンネル入口/線路敷地内/保守点検用通路も監視区域として設定することも可能です。 トンネル内(天井および壁面)に照明の影響を受けず設置・運用が可能なため、人の流入が多い駅ホームの監視が遠距離からでも行えます。 これにより、ホーム転落者やホームからトンネル内へ進入する人物を確実に検知することができます。

踏切における車両検知と衝突警告

踏切事故は、事故の被害者のみならず、鉄道インフラや車両への被害も甚大なものになります。 踏切内での滞留車両へ列車が接近するといった危険な状況下でも、赤外線サーマルカメラによる検知システムを用いることで、踏切内での衝突事故を未然に防ぐことができます。 赤外線サーマルカメラによる検知結果は「伝送制御プロトコル/インターネット・プロトコル(TCP/IP)」を介して運行管理センターへ警告信号の形で発信されます。 検知結果をリアルタイムで取得することにより、運航管理者は現場の詳細状況を確認し適切な処置を講じることができます。 走行中の列車運転手へ緊急信号や警告灯でいち早く異変情報を送ることで、衝突事故を未然に防ぐことができます。


フリアーシステムズ赤外線サーマルカメラの導入により、鉄道のトンネル管理者は事故や火災の早期検知が可能になります。


フリアーシステムズの埋め込み型の列車車両用赤外線火災感知センサーは、ホットスポットを素早く検知し、出火源を特定して火災の拡大を防ぎます。


座席占有率の検知


赤外線 - 電磁スペクトルの一部

通常、私たちの視覚は限られており、ごく一部の電磁スペクトルのみ見ることができます。 熱エネルギーは、可視光よりもはるかに長い波長を有します。 波長が長すぎるため、人間の目では電波を見ることができないように、熱エネルギーを見ることができません。

赤外線サーマルカメラにより、私たちが認識できるスペクトルの範囲が劇的に拡大され、様々な物体から放出される熱エネルギーの「可視化」と「測定」が行えるようになります。 赤外線の観点では、可視光と異なり、絶対零度を超えた物体からは必ず熱(赤外線)が放出されます。 例えば、氷などのごく低温の物体でさえ、赤外線を放射しています。 可視光は熱世界に影響を与えないので、非常に明るい環境でも暗い環境でも同じように見えます。

物体の温度が高いほど、赤外線の放射量も高くなります。 赤外線を有効に活用することにより、肉眼には見えない物体も明瞭な可視化が可能になります。 赤外線サーマルカメラは、肉眼に見えない赤外線や「熱」放射の画像が生成され、高精度な非接触温度測定が行えます。


踏切内での滞留車両へ列車が接近するといった危険な状況下でも、赤外線サーマルカメラによる検知システムを用いることで、踏切内での衝突事故を未然に防ぐことができます。

トンネルおよび列車車両の火災検知

従来の標準的な火災感知器は、煙粒子を頼りに物理的に煙を探知する方式を採っています。 この検知方法は煙の検知にある程度時間がかかるため、その間に、本格的な火災に発展してしまいます。 また、従来の鉄道車両用の煙感知器は、タバコの煙による誤作動も多く、実用性はそれほど高くありません。

しかし赤外線サーマルカメラであれば、従来の煙感知器よりもはるかに素早く出火や発火を検知する能力があります。 赤外線サーマルカメラの場合、煙粒子をセンサーで検知する方法や周囲温度変化に基づく検知方法ではなく、カメラ視野内の物体から放出される「熱エネルギー」を活用することで検知を行います。 赤外線サーマルカメラは、動的ビデオ検知アルゴリズムの追加により、ホットスポットのサイズ/温度上昇率/動きも考慮することができます。

赤外線サーマルカメラは、ホットスポットの検知や出火の早期発見により火災を抑止できるため、火災の拡大を未然に防ぐことができます。 赤外線サーマルカメラでは、各ユーザーの設定した最高温度の閾値を超えた時点で交通管制室に直接警報を通知させることができます。 FLIR ITSシリーズ Railなどの赤外線サーマルカメラは、ホットスポットの常時監視の用途に広く普及しており、出火の早期警報により火災の発生を未然に防ぐことができます。

また赤外線サーマルカメラの使用により、消防士の視認性が強化され、煙の透過やホットスポットの検知も可能になります。 さらに、フリアーシステムズの埋め込み型の列車車両用赤外線火災感知センサーは、ホットスポットを素早く検知し、出火源を特定して火災の拡大を防ぎます。 フリアーシステムズの埋め込み型センサーは誤警報の発生率が低く、タバコの煙などは検知対象から外されます。

 

FLIR RSX-F

FLIR RSX-Fは、火災検知の総合アルゴリズムを持つ赤外線センサーが備えられており、従来検知法よりも迅速に列車車両の火災を検知できます。 RSX-Fの場合、煙粒子をセンサーで検知する方法や周囲温度変化に基づく検知方法ではなく、カメラ視野内の物体から放出される「熱エネルギー」を活用することで検知を行います。 動的ビデオ検知アルゴリズムにより、ホットスポットのサイズ/温度上昇率/動きも考慮することができます。 この検知方法では、タバコやライターなどの火源は検知対象から除外されるため、誤警報の発生率が非常に低くなります。

FLIR RSX-Fは、火災検知の主要機能の他に、客車の座席占有率の測定能力もあります。 センサーは、人間固有の温度特性を活用することで極めて高精度に客車内の人間を検知します。 座席占有率の情報に基づいて、鉄道管理者は駅プラットフォーム上の乗客の流れの調整や、客車内の空調システムの調整も行えます。 FLIR RSX-Fは、統合フルHD可視光カメラと共に使用することにより、列車内のCCTVシステムとしても機能します。

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柔軟性の高い技術

赤外線サーマルカメラは非常に柔軟性の高い技術であり、以下のようなメリットがあります。

  • 高画質、かつ熱動画の検知用途に特化
  • 様々なレンズオプション:カメラ視野の最適化を行い、各現場環境や特定の設置方法にも対応できる
  • 設置が簡単:既存のインフラへ円滑に設置が可能
  • 苛酷な環境にも耐性のある全天候対応型
  • 歩行者や車両の検知技術において赤外線サーマルカメラを用いた画像検知システムは、既存の検知技術と比べ、トップレベルの信頼性と柔軟性を有しており、様々な用途・分野において安全性や業務効率の向上を実現できます。

表示画像は実際のカメラの解像度とは異なる場合があります。 画像は例示目的にのみご使用ください。

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