ガス漏れ追跡による、保守・安全上の問題点の明確化

オランダ・ロッテルダムのPernisにあるShell Nederland Raffinaderij社は、総延長16万キロ以上にも及ぶパイプラインを備えたヨーロッパ最大規模の石油精製所です。 同社では、企業全体の品質システム・生産管理プロセスにおいて、安全性と環境に対する配慮を徹底しています。 また、厳格な安全対策も実施しており、予防保全を自社の最優先課題として掲げています。

大半の化合物やガスは、肉眼で見ることができません。 現在、多くの企業の製造工程のあらゆる段階で、こうした物質が大量に使用されています。 産業用の揮発性ガス状化合物に関する漏出の追跡、文書化、修復、報告の方法や実行頻度は、厳格な規制により定められています。 通常、こうした技法には「毒性蒸気分析法(TVA)」や「嗅覚探知法」が採用されています。 「当社は、ガス漏れの有無を検査する際、過去にガス漏れの検出された場所であろうとなかろうと一様に全てのシステムを点検しています。 定期的に点検を行っており、特に施設の稼働停止後に業務を再開させる際にはこうした点検確認が不可欠です。

このような大規模な製油所では、配管、活栓、密閉装置、バルブ、トーチは施設全体で膨大な数に上ります。これら全てについて、まさに何万回ものテストを実施する必要があるのです。 FLIR GasFindIRを導入する以前は、TVAで点検を行っており、1日に約500回もの検査を行うことさえありました。 しかし、この赤外線カメラシステムを使用すれば、たった1名の検査員により、わずか1時間で100カ所以上も点検することができます。 赤外線カメラシステムを利用する最大の理由は、配管からのガスや揮発性有機物の排出を最小限に抑えられることです。特に、フランジやガスケット周囲では、漏出の生じる可能性が高くなります。」と、Shell Pernis社のリサーチアナリスト、Rutger Zoutewelle氏は説明しています。

安全なスキャン法

現在の産業界では、安全性、効率性、収益性をいかに高めるかが成功の秘訣と言えます。 メンテナンスの実施にあたり、メンテナンスエンジニアは、プラント全体の状況を可能な限り詳細に把握しておかなければなりません。 赤外線カメラシステムは、障害リスクを追跡する上で非常に重要なツールです。 私のこれまでの経験によれば、全ガス漏れ件数の最大84%は、プラント全体のわずか1%未満に相当する一定の場所で繰り返し発生しています。 つまり、高価な検査ツールを使用して多大な労力をかけて点検を進めても、その99%は、元々ガス漏れのない安全な場所を無為にスキャンしていることになります。 こうした区域でFLIR GasFindIRを使用すれば、時間や人件費を大幅に節約できます。

現在の検出法では、肉眼に見えない化学物質や有害性の高い化学物質に検査者が曝露される恐れがあります。さらに、誤測定の要因ともなり得る風や天候などの諸条件が一切考慮されていません。 また、過去に既に漏出が起きているポイントに関する検査情報しか分かりません。しかも、点検者自身の周辺の極めて狭い範囲しか実際には測定されていません。 FLIR GasFindIRに備えられた赤外線技術は、ガス漏れを煙上に明瞭に可視化する能力があります。 まず、FLIR GasFindIRを用いて安全な距離から漏出を確認します。その後、毒性蒸気分析器を用いれば、漏出物質の濃度を判定できます。 Rutger Zoutewelle氏は、次のように述べています。「ヒューストンプラントの従業員から、FLIR GasFindIRに関する情報を初めて聞きました。 それまでの当社の検査方法と比べても、このカメラは従来技法にはない数多くのメリットがあります。 このカメラでは非接触の方法で素早く測定が行えるため、足を踏み入れることが困難な場所でも簡単に検出が行えます。 さらに安全性や環境面のメリットもあります。」

メリット

GasFindIRの中核をなすのが、冷却型インジウムアンチモン(InSb)検出器です。 この冷却型検出器の効果により、細部まで鮮明な高解像度画像が得られます。 このカメラは重量わずか2.5kgで、過酷な産業環境での使用に耐え、-15℃~+ 50℃までの幅広い温度範囲で正常に動作します。さらに、標準的なPALフォーマットで赤外線映像をリアルタイムに生成する能力があります。 GasFindIRの産業衝撃評価は40Gです。 このカメラは、20種類もの様々なガスをリアルタイムに検出する能力があります。漏出ガスは、黒色の煙状に表示されます。 つまり、カメラのこうした特性により、広域に渡るパイプライン施設も安全な距離から円滑にスキャンを行えます。 Rutger Zoutewelle氏は言います。「通常であれば、石油化学事業所のパイプやフランジ、バルブや接続部には、欠陥箇所はめったに存在しません。 とはいえ、当社の管理範囲を超えた特定要因により、欠陥箇所がわずかに発生することもあるでしょう。

ヒューストンプラントの従業員がこのシステムを使用して漏出の追跡を行い、優れた検出結果が得られました。そこで、Shell Pernis社は、本格的に赤外線カメラシステムを本施設にも導入することを決定しました。」 赤外線カメラシステムを取り扱う人員は、必ず、短期トレーニングコースを受講する必要があります。さらに、トレーニング終了後には、システムの取り扱い方法をさらに体得するため、数日間の実地訓練を行う必要もあります。 多少の準備期間は必要ですが、一旦、取り扱いに慣れればカメラは数多くのメリットをもたらします。 現在、赤外線カメラは、製油所で常時使用されています。また、施設の稼働停止後に業務を再開させる際にも、必ずカメラによる点検を実施しています。 赤外線カメラは非常に有効性の高いツールであり、優れた予防保守のソリューションでもあります。

スマートなソリューション

熱画像技術を現場で利用するには、機器やユーザーは高い要求を満たさなければいけません。例えば、通常、検査対象から一定の安全距離を確保する必要があります。また場合によっては、検査対象への接近方法が大きな課題となるケースもあります。 次に、検査作業時には高所へ登る必要性が生じる場合や、大規模プラントでの検査には時間がかかる点に留意しなければなりません。 つまり、検査者が現場で携帯すべき機器のサイズや重量が大きく関わってきます。 「当社プラントを安全に高効率に稼働させる上で、GasFindIRは大きく貢献しています。 赤外線カメラを使えば、直接的で明確な画像により信頼性の高い結果が得られるため、安心して作業に取り組むことができます」とRutger Zoutewelle氏は述べています。 「漏出の発生率が極めて高い高圧システムの検査に、赤外線カメラは最適です。 赤外線カメラは、今では当社にとって不可欠なツールです。」

多種多様な方法でカメラを使用して、プラントの安全性を点検することができます。 熱画像技術を利用すると、大きなメリットがいくつもあります。 例えば、検査実施時に逐一、システムをシャットダウンする必要がないこと。また、危険な検査対象物から安全な距離を確保した上で、素早く比較的低コストで測定を行えること。さらに何よりも、問題を早期に特定できることです。

この赤外線カメラシステムを使用すれば、たった1名の検査員により、わずか1時間で100カ所以上も点検することができます。 このシステムを使用する最大の理由は、ガスや揮発性有機物質の配管漏れを最小限に抑えられることです。

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